学習科学 (放送大学教材)
放送大学教育振興会
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内容

こういう教科書系の本を紹介するのはなかなか難しいですね。目次を見てもらえばどんなトピックが取り上げられているかはわかると思いますが、前半はいわゆる学習に関する理論、後半はより実践に近いプロジェクトなどの紹介となっています。

前半では、人がどのように熟達化していくのかという熟達研究や、子どもの発達に関する知見がまとめられています。

後半は、学習環境をデザインするという視点から、海外のプロジェクトが紹介されています。ここで出てくるプロジェクトはネットでもよくまとめられています。その一部を紹介します。

  • Knowledge Forum

http://www.beatiii.jp/beating/023.html

1990年代初期に、

テクノロジを駆使してこのような考え方を実現しようとしたプロジェクトに、

CSILE(Computer-Supported Intentional Learning Environment:コンピュー

タに支援された自覚的な学習環境)と呼ばれるものがあります。

平たくいうと、Knowledge Forumはネット上の掲示板みたいなものです。そこで、子どもたちがディスカッションしながら学習をしていきます。なぜそんなことをするのか?ネットの掲示板とどの辺が違うのか?そのあたりはリンク先をどうぞ。

  • Learning By Design

http://www.beatiii.jp/beating/024.html

つまり、科学者はひとりで研究しているわけではなく、一種の協調的な学びの

プロセスを行っているのだということができます。

ジョージア工科大学のジャネット・コロドゥナーはこの科学者たちが実際に行

っているプロセスをものづくりの中に活かした実践を行いました。彼女は人工

知能研究のバックグラウンドを持っており、そこでの研究手法はまさしく科学

者の協調的な学びのプロセスでした。彼女自身なじみのある実際の科学者の研

究の世界において、公式が作られ使われていくプロセスを再現したのが

Learning By Design(LBD)です。

こっちも平たく言うと、ものづくりしながら学ぶ実践です。具体的にはふうせんで走る車とかをつくるわけです。人よりも速い車とか、長い距離走る車とか、他人とインタラクションしながらそういうものをつくっていくプロセスから学ぶ実践です。

  • The Jasper Project

http://www.beatiii.jp/beating/037.html

ジャスパー・プロジェクトで狙っていることは、一言で言うと「学んだ知識を

日常生活でも使えるものにすること」です。せっかく学校でかけ算や割り算を

習ったのだから、スーパーの特売でいくら安くなったのか分からなくては困る

のです。

開発者のブランスフォードは、「知識として知ってはいても、実際に問題を解

くときには使えない」状態を「不活性な知識(inert knowledge)」と呼び、知識

を活性化させるために様々な「仕組み」を埋め込んだのです。

これはビデオ教材といってしまっていいかな。教材がものがたりになっていて、それを解決するために数学とかが必要になるかんじです。例えば、傷ついたワシを助けにいくためには、距離と時間を計算する必要があったりして、知識が埋め込まれているというかんじですね。

面白いポイント

うーん、この本はやはりよくまとまっていますね。前半の理論編はちょっと難しく感じるかもしれませんが、後半の実践につながる知見がよくまとまっています。やはり前半あっての後半かなと思います。

後半は、重要なプロジェクトを一気に見ることができます。やはり、すでにどういうことがやられていて、どんな成果と問題があるかを知っておくことは悪くないですよね。たぶん、似たような興味関心を持つモノがあるんじゃないでしょうか。

この本について語る

この本は久しぶりに読みました。あらためて読むと以前は気づかなかったものが見えますねえ。というよりも、体系的に見ることが出来るってかんじでしょうか。

しかしまあ個人的に思うのは、こういうプロジェクトってあんまり普通の人、知りませんよねえ。同じようなことに興味はもっていると思うのですけども。そういう知見をお茶の間の人にお届けすることというのは大切だよなと思います。

こないだ紹介したQuick Japanで、浦沢直樹さんが言っておりました。「書いた漫画をお茶の間に届けたい」と。なにをどこまで描くかを考えたときに、それが基準となるようです。面白いですよね。

そんなところで。