さきほど京都大学で実施されている以下のイベントに参加してきました。イベントが終わった直後ではありますが、速報的に感想をまとめておきたいと思います。イベントの詳細は以下になります。
大学生研究フォーラム2014
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/forum/2014.html
2008年の第1回開催から数えて7年目を迎える「大学生研究フォーラム2014」。今回は、高校生・大学生のキャリア、学び、企業の採用、人材マネジメントについて考えます。大学の教員、キャリア支援組織の職員、企業関係者、高校の教員の方々が一堂に会して、「変わる大学の入口と出口」について議論を深めていきます。
今回イベントに参加して感じたことを自分のツイートともに簡単にまとめたいと思います。
■「社会で通用する人材を育てるための大学の役割、高校の役割」(鈴木寛先生)
鈴木寛先生のご発表は、日本という国がこれからどう成長していくのかという大きなビジョンと、教育をどうするべきかという話を関連づけてお話されていたのが印象的でした。目の前の問題(就活、学力など)にどう対応するかということをすぐ考えてしましがちですが、大きな視野とともに考えなくてはならないということを感じました。
また、溝上先生は、鈴木先生の大事なポイントを「異質な他者」というキーワードでまとめておりました。このキーワードについては、自分自身も関連する研究をしていることもあり、今後も深めていきたいテーマだとあらためて感じました。
異質な他者と出会って行くシステムを作っていくことの重要性。これは個人的にも追い求めていきたいテーマ。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
■ 「大学生のキャリアと学び」
ここでのセッション概要は以下の通りです。
・「キャリア教育が入口と出口をつなぐ」
川崎友嗣(関西大学 社会学部)
・「大学の学びとキャリア意識」
田澤 実(法政大学 キャリアデザイン学部)
感想はツイートに書きました。
川崎先生のお話はキャリア教育の現状をまとめた上で、問題提起という内容。ポイントは、キャリアの選択、厳しさ、プランニングなどが重視されすぎているのではないかということ。外圧によって大人化しなくてはならない現状は自律をさまたげるのではないかという問題提起。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
キャリア教育というかたちで科目として実施するだけでなく、各授業のなかでキャリア教育的な側面がおさえられるのがよいのではないかというのはかなり同意。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
続いて田澤先生(法政大)のお話。研究内容のご報告です。研究目的は、1.どのような大学進学動機を持ち、2.どのような大学生活を送ることが、3.就職活動開始時期のキャリア意識に影響するのか、を明らかにすることです。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
田澤先生の調査結果をまとめると、1.なぜ大学に入ったのかの理由を説明できること、2.講義時間外に学習する習慣があること、はキャリア意識にプラスに働く。一方、身近な人とのかかわりから得られることは限定的、という点。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
川崎先生は、キャリア科目として独立しないかたちで、必要な力を身につけるという話をしておりそこはとても同意したのですが、具体的にどのようなかたちで実施していくのがよいのかを考えたいなと感じました。
田澤先生は、以前から書籍などを読ませていただいていたこともあり今回お会いするのが楽しみでした。発表内容も調査の結果をクリアに説明されていました。それを踏まえて今後のことを考えると、調査結果からどうやって介入に結びつけるのかについて考えていきたいと思いました。授業時間外にも学べるような学生はどうやって育てることができるのかなかなか難しいですね。
■「大学のアクティブラーニング」
ここでのセッション概要は以下の通りです。
・「同志社大学における全学レベルのプロジェクトベース学習(PBL)」
山田 和人(同志社大学 文学研究科)
・「反転授業とともにあるアクティブラーニング」
山内 祐平(東京大学 大学院 情報学環)
感想はツイートにまとめました。
同志社大のPBLは、プロジェクト課題を公募制にしているとのこと。このあたりの仕組み面白い。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
山内先生から反転学習の講演を聴くのははじめてだったが、事例や目的などの切り分けがクリアでかなり頭が整理された。特に、「完全習得学習型」「高次能力学習型」があるという分類や、何をデザインの肝にすべきかという話は面白かった。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
同志社大学の実践は、立教大学の実践とも近い部分があるため、具体的に参考になる部分が多かったです。山内先生のお話は、反転学習の効果などが整理されていたため、こちらもあらためて授業実践の中に取り入れてみたいと感じました。
■インテグレーション・セッション
今回の大学生研究フォーラムは並列してセッションが行われていたため、セッション終了後にそれぞれのセッションで何が行われたのかについて参加者同士で共有しました。最初は、ファシリテーションで入っていた先生方が全体に共有して、次に参加者同士でディスカッションしました。ジグソーメソッド的なセッションというのはなかなか面白いですね。
印象的だったのは、中原先生が話をしていたヤフーさん、インテリジェンスさんのお話です。
大学で「変化慣れしている人」「常に変わり続ける人」を育てることが重要ということは、結局育てる側の環境も変化し続けていく必要があるということなのだろう。つまり、我々も変化して学び続けていなくてはならないということではないか。
— 舘野 泰一 (@tatthiy) 2014, 7月 27
「変化慣れしている学生を育てる」というためには、常に環境も変化させていく必要があるわけで、その意味では大学も常に変わり続けていかないといけないのではないかということを感じました。
■ラップアップ(溝上先生)
今回のラップアップは溝上先生でした。溝上先生のお話とても面白かったです。
たとえば、「とがった人材が欲しい」と企業でいうけれど、基礎力がなくてもいいのか?そもそもとがった人ってどうやって測るといいのか?といった問いかけは、大学関係者・研究者として共感する部分も多いなと感じました。
■全体の感想
今回の全体的な感想として思うのは、まず「いま知りたいと思っていることが知れた」という感覚があります。こんな内容聞いてみたいなと思うような発表がそろっていたという感覚を感じました。これは自分自身も立教大学経営学部におけるPBL型授業にかかわるようになったからそう感じるようになったのもあるかもしれません。実践、研究で今後こんなことを試したいと思うような気持ちが刺激されました。
次に、いろいろな人と会えてよかったということがあります。登壇者が豪華で幅広いジャンルの方だったということもあると思うのですが、これまで別々の場所で会っていたような人たちが一同に会していた感覚がありました。たとえば、企業関係の方ともここでたくさん会えるようになったような気がします。大学・高校関係者においても、少しずつ幅が広がっているのかなということを感じました。
結局のところ、現在は「高校」「大学」「企業」でそれぞれで何をすべきかは、それぞれの人たちだけで考えていても難しいという状況があると思うんですね。たとえば、これから「大学」がどうあるべきかを考えるためには、高校を見つつ、企業を見つつではないと決められない部分が大きいと。そういう意味では、今回のように、それぞれの人たちが「我々はこう思う」という意見を話せる場があるというのは意義が大きいのかなと感じました。
全体を通してあっという間に時間が過ぎ、これからこんなことをやろうと思えるような刺激をもらいました。今後は私自身もここで話題提供できるような実践、研究ができるようにいろいろ試していきたいなと思います。
以上、超速報版のまとめでした!
(速報版なので、誤字脱字、文章がおかしいところがあれば適宜修正いたします笑)
■参考記事
ちなみに昨年度のこのイベントについてまとめているのでよろしければご覧くださいませ。
「大学生研究フォーラム2013」に参加してきた!:学生のうちに経験させたいことはなにか?
https://www.tate-lab.net/mt/2013/08/2013forum.html
ジグソーメソッドについて学部4年生のころにメルマガで執筆したものがあるのでこちらもよろしければご覧くださいませ。
「5分でわかる学習理論講座」第7回:ジグソーメソッド
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/018.html
■関連する書籍
電通育英会・京都大学とは、私が東京大学にいたときに共同研究をさせていただきました。成果はこちらの書籍にまとめられています。私はこの書籍のなかで「異質な他者とのつながり」について考察をしました。今後今回の研究をいろいろな方向で発展させていきたいと思っています。
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