先日も紹介した「イノベーションの理由 資源動員の創造的正当化」の本から、個人的になるほど!と思った部分を抜粋しつつ紹介したいと思います。
今回は「時間」「困難」「解決策」の3つに焦点を当ててみました。(この本では、イノベーションの理由について23の事例をもとに検討しています。)
・スタートから事業化までに平均約9年
イノベーションのスタートを「商品の着想や、要素技術の開発に着手したタイミング」とすると、事業化するまでに約9年かかるそうです。やはりそのくらいかかるのですね。
私は最初に「長い」と感じましたが、みなさんはどうでしょうか。当たり前かもしれませんが「新しいアイデアを発見して、よしGO!」というわけにはいかないのだなということを感じました。
でもたしかに私たち研究者にとっても、新たな研究のアイデアを考え、実験や分析をして、論文化をし、さらに社会にでるというところまで考えると同じくらいの年月がかかるのでそんなものかもしれませんね。
・事業化に向けて資源動員することへの抵抗や批判を受けたり積極的な支持を受けられなかったケースが半数以上
イノベーションはそもそも客観的な経済合理性を欠いているので、なかなか事業化にたどり着けないというジレンマをやはり多くの事例で体験するようです。このあたりについては前回のブログでも書きました。
「新しいものが必要だけど、前例がないからお金や人を出せない」という矛盾を超えるには?
https://www.tate-lab.net/mt/2013/08/post-285.html
アイデアをカタチにするためにやはり多くのハードルがあるようですね。
・客観的で合理的な理由を欠いているものにゴーサインをだす?
ではどうやって乗り越えたかのか?ポイントはこの本のタイトルにもある「創造的正当化」です。客観的な経済合理性によって合意するのではなく、特定の推進者と特定の支持者が理解して認めるというプロセスのことをさします。経済合理性を乗り越えるためには、ある意味客観的に、みんなに認められるというプロセスとは異なるのでしょうね。
本書の中では具体的にどのようなプロセスで合意したのかプロセスやパターンが詳細に書かれています。
・まとめ
今回は本のポイントをもとに書いていきました。イノベーションというと「新規なアイデア・技術」に焦点が当たりますが、事業化するためには本当にいくつもの壁を乗り越えることが必要になりそうです。こうした「実現化」の部分においてどのようなプロセスが必要かということに焦点を当てた研究はすごく面白いなと思います。
・研究会を実施します
このあたりのことを自分自身もより勉強しようと思い、9/18にこうした社内でのイノベーションの実現プロセスについて、実際の企業の事例を紹介していただいたり、今回紹介した創造的正当化の理論など、社内でのイノベーションの実現化に関する研究知見の紹介をいただき、ディスカッションする研究会を実施します。
今回紹介した理論などについてもより詳細に理解するきっかけになると思います。当日はゲストとして、実際に社内のイノベーションプロセスについて仕事として関わられている伊達洋駆さん(株式会社ビジネスリサーチラボ)、イノベーションに関する研究をされている福澤光啓さん(成蹊大学)をお呼びします。
おそらく企業の中で、実際にこうしたプロセスに直面され、悩みを抱えている方も多いのではないかと思います。研究会は、一方的な講演形式ではなく、参加者の方同士も気軽に対話できる時間も多く設けています。ぜひ一緒に対話できれば幸いです。
お申し込みはこちらのフォームをご利用くださいませ。
http://goo.gl/q1JWM6
■関連する文献
この本の内容をもとに今回は記事を書きました。
有斐閣
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ゲストの福澤さんが執筆されています。
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