今日は三宅なほみ先生の授業がありました。今期の授業は、なほみ先生が、あるトピックについてお話をし、それを聞いて全体でディスカッションをしていくスタイルで進められています。
今日の授業のテーマは「質問・疑問に関する研究」についてでした。
「質問」というと、みなさんどんな場面を思い浮かべますか?例えば、ひとつの状況として、授業の後に「わからない人は質問して下さい」とか「なにか質問ありますかー?」みたいな問いの場面があると思います。
あの問いの前提というのは、「わかっている人はいいけど、わからない人は、なにか質問してね」ということですよね。すいません、すごく当たり前のことを確認しているかもしれません。
しかし、それってどうもおかしくない?ってことを思わせてくれるのが、今回の授業で紹介していただいた、なほみ先生の論文です。論文は下記となります。
タイトル:To Ask a Question, One Must Know Enough to Know What Is Not Known.
http://www.eric.ed.gov/ERICWebPortal/custom/portlets/recordDetails/detailmini.jsp?_nfpb=true&_&ERICExtSearch_SearchValue_0=ED175883&ERICExtSearch_SearchType_0=no&accno=ED175883
1978年の論文で、なほみ先生が出した論文の中で唯一、一発でacceptされた論文とのことでした(笑)
この論文の内容を、僕なりにヒトコトでいうならば、「質問はわからない人がするものではない。よくわかっているからこそ、質問が出来るのである」ということです。これは最初に話した、「初心者が質問する」という前提とバッティングしますよね。
この論文では、上記のことを仮説とし、検証しています。
すごく簡単にいってしまうと、ある課題についての初心者は、簡単な問題についてはたくさん質問できるけど、難しい問題については質問があまりできない。一方で、ある課題についてよく知っている人は、簡単な問題については質問数が少ないけど、難しい問題についてはたくさん質問が出来るという仮説をたてました。まとめるとこんなかんじ。
初心者の場合:簡単な問題→質問数 多い 難しい問題→質問数 少ない
熟達者の場合:簡単な問題→質問数 少ない 難しい問題→質問数 多い
結果はこれを支持するかたちで出てきました。
この結果をみていると、要するに「質問すること」は「わかっているからできる」というところがあるわけですよね。
そう考えてみると、授業の最後とかに「わからない人は質問して下さい」という問いはなんだか変ですよね。だって、質問は「わかっていないと出来ない」のですから。
今日はこの論文を素材として、ディスカッションをしました。この論文の内容も面白かったですし、なほみ先生が海外に留学して、この論文を書くまでの背景の話も非常に興味深かったです。この話はまたあとで紹介できればと思います。
元々僕は学部時代こうした話にとても興味を持っていたので、この授業に出ていると、心の奥にある興味関心をくすぐられる思いがします。とても面白い授業です。また、次回の授業も報告できればと思います。
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▽以前紹介したなほみ先生に関連する記事
大学授業を活性化する方法を読み直した
https://www.tate-lab.net/mt/2009/05/post-99.html
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協同学習の実例集が中心
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