昨日、大学について書きましたので、今回も少し昔の大学について書いていきたいと思います。今回は具体的にどんな教育がなされていたのかということについて書いてみたいと思います。
今回の参考文献は「大学の歴史」です。今回は中世の大学で行われていた「スコラ学」という学問・教育スタイルについて見ていきましょう。
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この本ではスコラ学の特徴として、4つのポイントが示されています(p42〜46)。これをすごくざっくりまとめるとこんなかんじです。
1.原典
教育は数少ない「原典」にもとづいていて行われていた。原典とは知識の基礎となる一般原理が書かれているとされているす。例えば、論理学と哲学はアリストテレス、神学は聖書といったかんじ。これらを教科書として使用していた。
2.講読と討論
教育方法は「講読」と「討論」の2つが中心。講読はテキストを正確に読むことと、問いなどを考えるより踏み込んだ読解をすることの2つがある。「討論」では、テクストを丹念に読みながら「問い」を見つけて、教師の指導のもと、聴衆の前で学生が議論をする。
3.学位
試験と学位授与というシステムができた。これは当時の教会とは異なるシステムだった。学位が交付され、これは学生たちの知的能力を保証するものとなった
4.書き言葉と口頭表現
大学の教育は基本的に「口述」。教師は講読内容を書き取らせてはだめで、当時の学生はノートを取らずに教師の説明をおいかけていた。ちなみに、この当時は書物が高く、個人で所有するというわけにはいかなかった。
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いかがでしょうか。「原典」をベースに、それをしっかり読む。そして、その知識をもとに議論を行うというのであれば、いまも似たようなことがやられていますよね。ちなみにスコラ学に対する批判としては、「古代からの学知の分類がそのまま採用されていること」や「討論は意味のない饒舌を助長している」などといったものがあったようです。これらの批判や時代の流れから、徐々に「ゼミナール」という方法が注目されていくことになります。
当たり前ですが、大学で「どのような科目を取り扱うのか」「どういう方法で学ぶのか」ということは時代によって異なります。その方法とは「大学とは何か」ということと密接に関係しますし、「大学と社会の関係」をあらわしたものでもあります。
現代の大学においても、さまざまな新しい教育方法の検討がなされていますが、それも実は「大学とは何か」「大学と社会の関係はどのようなものか」を前提にしているので、そのあたりをあらためてしっかり考えるのも面白いですよね。
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また、当時は「口述」がメインであったという話がありますが、印刷術などの発展と大学の価値や教育方法の変化は切り離して考えることができないというのもポイントですよね。このあたりは吉見先生の「大学とは何か」に詳しく書いてあったと思います。
現代においても「書籍」ということだけをみてもこれから一層電子化は進むでしょうし、「オープン・エデュケーション」といわれるようにウェブがあれば教材も講義も見ることができるという状況が生まれてきています。こうした環境の変化が大学時代のあり方に影響を与えることは間違いないでしょう。
このように少し歴史などを振り返りながら現在の大学教育について考えてみると、少し大きな視点で考えることができますよね。大きな視点を持ちながら、具体的な教育方法を提案できるようにがんばりたいなとあらためて思いました。
具体的な学び方などについては、これまでも記事を書きためてきたので、大きな視点の方を少しずつ書いていければと思います。
レポート・研究の進め方のアドバイス集
https://www.tate-lab.net/mt/report-writing.html
大学の歴史シリーズ、もう少し続けるかもしれません(笑)
■参考リンク
・2007年度 第2回:オープンエデュケーションが切り開く未来 教育におけるオープン・イノベーション
http://www.beatiii.jp/seminar/031.html
・無料で学べる「オープンエデュケーション」がもたらす人材革命?ウェブで教育の機会が世界に開かれる意味:飯吉透×石倉洋子?
http://www.academyhills.com/note/opinion/12080201OpenEducation.html
■関連する文献
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