内田樹先生の「街場の文体論」を読みました。この本は内田先生が「クリエイティブ・ライティング」という授業で話したことをもとに書かれている本です。全部で第14講分収録されています。
テーマは「書くこと」なんですが、細かいテクニック論ではなく、むしろ「書くこととはいかなることか?」という本質について書かれた本といえると思います。
第1講のタイトルは「言葉にとって愛とは何か?」というテーマなのですが、いきなりめちゃめちゃ響きます。響いた箇所を引用させていただきます(p.17)。
数十年にわたり賢愚とりまぜ腐るほどさまざまな文章を読み、また自分も大量の文章を書いてきた結果、僕は「書く」ということの本質は「読み手に対する敬意」に帰着するという結論に達しました。それは実践的に言うと、「情意を尽くして語る」ということになります。
第1講では「読み手に対する敬意」「読み手に対する愛」という言葉が頻繁に出てきます。つまり、いかに読み手に対して敬意や愛を持つかということが、よい文章を書くためのポイントになるということですね。
一方、「読み手に対する敬意のない文章」というのは例えば「こんなこと書くと喜ぶんだろ」という態度で書く文章です。内田先生は「読者を見下した態度」と表現しています。こうした態度で文章をかかざるを得ない場面もあることは内田先生も認めているものの、得られるものは少ないと書いています。
タイトルにも入れましたが「こんなもんでよかっぺイズム」というのは椎名誠さんの言葉で「合格最低ラインぎりぎりの仕事しかしない態度のこと」だそうです。「だいたいこれくらい書いておけば合格点もらえるでしょ」という態度は一度はまると抜け出せません。これを超えてくることが大事という話でした。
僕は「書くこと」について研究も、実践もしていますが、このあたりの話はかなり響きました。
自分自身が書くときについても「本当に読み手に対して敬意をもっているのか?」を問い直しましたし、書き方について教えるときにも「こんなこと書けば合格点もらえます」的な教え方になっていないかなということを思いました。
「こんなもんでよかっぺ」という気持ちで文章を書いていないか?
これは文章を書くときにいつも問い直したい言葉だなと思いました。
「書くことの本質」ってなんなんだろう?ということに興味がある人にはぜひともおすすめしたい一冊です。
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