研究をしていると、他人に自分の研究についてコメントをもらったり、自分がだれかの研究にコメントする機会が多くあります。コメントは、1人では気づかない新しい解釈に気づいたり、研究の足りない点、発展させられる点に気づくことができます。

科学者っていうと、なんとなく一人で研究するイメージがありますが、実際はかなり頻繁に協同で推論を作ったりしていて、それが科学的発見にもつながっているという話もあったりします。(詳しくはまた記事をあらためて書こうと思います。巻末に本を紹介しました)

このように「コメント」はとても大事なので、せっかくなら自分も他人の発表に対してよいコメントをしたいですよね。

じゃあどうしたらよいコメントができるのか?

今回はこれについて僕が実践している方法の1つを紹介できればと思います。もちろん色々あると思うので、なにかみなさんがやっている方法などがあれば教えてください。

僕がやっているのは「先生のコメントを予測して、答え合わせして、内省する」というサイクルを回すという方法です。具体的には以下のサイクルを回すイメージです。

1.コメントの予測
2.答え合わせ
3.当たりはずれの中身を内省

以下、詳しく説明します。

いいコメントをするためには、やっぱり「いいコメントをしている人」のマネをするのが一番かなと思います。例えば、指導教員や、先生たちなどですね。

じゃあマネをするためにはどうしたらいいか?

これは僕の直感で恐縮ですが「その人たちのコメントを聞いているだけ」ではマネできないと思うんですよね。

そこで何をしているのかというと「予測」なんですよね。

だれかの発表を聞いたら、必ず指導教員や他の先生などが「その発表に対してどんなコメントをするか」を「予測」します。

「この先生ならこういうことをいいそうだ」
「このあたりがつっこまれるんじゃないのかな」

という自分なりの仮説みたいなものを必ずつくります。まあ単純に自分がコメントするならなにをいうかでもいいんですけどね。

そしてその後「実際にその先生などがどんなコメントをしたのか」を聞いて、答え合わせをするんですよ。

「あー、やっぱりこういうところが気になるのか」
「あー、こういう角度でコメントすることもあるのね」

みたいなかんじですね。

当たりはずれだけではなく、ちゃんとその理由も吟味するのもポイントです。このサイクルを何度も何度もまわします。これをすると、自分の研究発表の機会以外でもかなり勉強になるんでおすすめです。

もう一度整理すると以下のサイクルになりますね。

1.コメントの予測
2.答え合わせ
3.当たりはずれの中身を内省

このサイクルをまわしていくと、自然と「自分が思うコメント」と「先生がいうコメント」が近づいてくるんですよね。「やっぱりそこが気になるよね」とか「やっぱりそう言われるか」と思うことが多くなってくることを実感できます。

こういう感覚を大事にしながら、他の人の研究にコメントをすると、あんまりはずしたコメントをいうことはなくなるような気がします。研究のポイントになるような部分に着目できるようになってくるかんじです。

いかがでしたでしょうか。今回は僕が実践している方法の1つを紹介しました。

おそらくポイントとしては、だんだん他の先生とかが言うコメントが予測できるようになったら、「予測した上でさらに違う角度からコメントする」ということが大切なのかもしれませんね。先生がいうことがわかるならば、あえて違うことを言うのも大事かもしれません。

こんな方法を紹介しておきながらも、やっぱりよいコメントをするのは難しいです。よいコメントをするためには、研究領域に対する知識や、発表者の研究内容を理解する力なども必要になりますよね。色々な角度から練習が必要だと思いますが、今回はその1つを紹介しました。

みなさんも何かよい方法があったら教えてくださいね。

○補足

科学者が協同で推論を行っているという話は、こちらの本の話をちょっと書きました。こちらはまたあとで詳しくblogで書ければと思います。

Dunbar, K. (2000). 孤独な科学者という神話をこえて: 科学における分散推論と科学的発見. 植田一博・岡田猛(編),
協同の知を探る: 創造的コラボレーションの認知科学 (pp. 36-39). 東京: 共立出版.