最近コミュニティについて学問的にもう一度しっかり考えたいと思い、いろいろ本を読み直しています。今回は「コミュニティのグループ・ダイナミックス」という本のご紹介です。

この本の紹介を以下に引用してみましょう。

人々とその環境の総体(集合体)が織りなす動態(動き)の中に、研究者が飛び込み当事者とスクラムを組んで現場を改善していく。それがグループ・ダイナミックスの真髄だ。

決して「心」を実体化しない。心理的問題も集合体の問題として捉える。

本書は、コミュニティの変革に取り組むグループ・ダイナミックスの実践現場に読者を招待する。自治、医療、教育、防災、家族、—-地域作りの軸は多様だ。コミュニティを見る目を豊かにする一冊。

わかったでしょうか(笑)少し難しいかもしれませんね。

本書は、「グループ・ダイナミックス」という学問的立場から、具体的な「地域のコミュニティ作り」について考えていく本です。

「グループ・ダイナミックス」ってなによ?というのを本書の説明からまとめてみると、

「グループ(集合体)」とは、一群の人々とその環境をひとまとめにした概念
「ダイナミックス」とは、動き、変化の学問

つまり、それらを足して考えると、

グループを、基本的に動いていく存在、変化していく存在として捉え、その動態を研究するのがグループ・ダイナミックスである。

ということです。

グループ・ダイナミックスには、集団力学という定訳があるが、筆者としては、集合体動学と呼びたいところである。

と筆者は述べておりました。

グループ・ダイナミックスは、従来の心理学と比較した場合、大きく2つの特徴があります。
ここは重要です。

1.内面の世界(心や頭の世界)のとらえ方

グループの現象を説明する上で、個人の心(頭の世界)から出発しない。また、グループの現象を個人の心や頭の世界に還元して説明することもしない。
→つまり、心理主義を取らず、社会構成主義的な立場から考える!

2.研究者の研究スタンス

グループ・ダイナミックスは、研究者とフィールドの当事者による協同的実践が進行してしまうことを認識するのみならず、より前向きに、当事者との協同的実践を学問的使命と考える。

こうした視点から、具体的な実践を分析していくというスタイルをとります。この本で紹介されている実践は以下になります。

1.自治:過疎地域における住民自治システムの創造
2.医療:住民主体の地域医療
3.教育:市民グループによる「学校」教育
4.防災:災害に強いコミュニティをつくる
5.家族:血縁なき「血縁関係」

前半に書かれている「グループ・ダイナミックス」に関する学問的な知見については、研究をしたい人にとってはわかりやすく書かれていると思います。ただ、初めての人にとっては、けっこう難解かもしれません。

実践に興味があるという方は、後半の具体的な例の部分を最初に読んでみるのも悪くないかなと思います。

この本を読んであらためて「社会構成主義」に関する本を読み直そうと思いました。関連する本もいろいろ紹介されているので、この本をきっかけに学び始めるのもありかなあと思います。

コミュニティのことに興味ある人にはおすすめ一冊です。

[関連する書評]

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https://www.tate-lab.net/mt/2009/04/post-91.html

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