「よい場作りの教科書」といわれると、あんまり思いつかないのですが、この本はとてもよいと思いました!
本書を書いた平野 暁臣さんは、空間メディアプロデューサーであり、岡本太郎さんが創設した(株)現代芸術研究所代表取締をされている方です。
この本をみて僕がすばらしいと思ったのは、場作りの仕事(本書では「プロデュース活動」と書かれている)の全体像を非常によく捉え、かつ実践できるようなかたちで書いている点です。
場作りをするというと、当日どういう活動をいれるかとか、どんな空間にするかとかってことに目を向けがちです。
しかし、実際に場を作った人ならわかるように、それ以外の仕事もたくさんありますし、それがけっこう大事だったりします。そういう点を含めて、かなり実践的に書いてあるなと思ったんですよね。
僕が特にいいなと思ったのは以下の部分です。少し長いですが、本文から引用させていただきます。(下線・太線は私がいれました)
仕事の八割は「説明」と「説得」(p.66)
「クリエイティブな仕事で羨ましい」と言われることがよくある。確かにそういう部分はあるけれど、コンセプトを組み立てたり演出を練ったり、といった純粋に創造的な行為に費やしている時間は、おそらくワーキングタイムの2割に満たないと思う。それが現実だ。ではいったいなにに時間を費やしているのか?
考えるまでもない。「説明」と「説得」である。これに「意見交換」を含めれば、ぼくの仕事の半分になる。会議、打ち合わせ、プレゼンテーションなど、形式や呼び方はいろいろあるけれど、要するに人の話を聞いたり、相手に自分の考えを説明したりしているわけだ。残りの時間は調査や資料作成などそのための準備に費やす。つまりは持ち時間の8割を「説明」と「説得」に咲いているのである。
こう書くと驚かれるかもしれないが、説明と説得こそがプロデュースという仕事の根幹なのだから仕方がない。クライアントを説得し、プロジェクトメンバーに意志を伝え、かかわりをもつ人々に説明を繰り返す。これをしない限り、プロジェクトは前に進まない。
これはかなり僕的に響きました。これ以外にも、実践に役立つ話がいっぱいです。いろいろ試行錯誤しながら場作りをしている人からすれば、目から鱗だったり、自分の背中を押されるような思いがするかもしれません。
目次をみてみると全体像がより一層つかめるでしょう。
はじめに 「プロデュース力」なくして戦いには勝てない
1 プロデューサーの仕事(構想
計画
編制
解述
監修
予測
調整
管理
承認
渉外)2 プロデュースの構造(プロデュースの原子構造
プロジェクトのバックグラウンド
基本使命(ミッション)
基本思想(プリンシプル)
基本戦略(ストラテジー)
基本主題(テーマ)
基本情景(ヴィジョン)
基本スキーム(ストラクチャー)
基本エレメント(コンテンツ)
基本フォーメーション
準備は全て整った)
かなりおすすめの一冊です。
場作りに興味がある方はぜひ手元においておきたい本かなと思います。
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