先週、三宅なほみ先生、東京大学の教育学研究科の方や、ベネッセの方とともに勉強会を行いました。勉強会で読んだ本は、ウェンガーのDigital Habitatsです。今回は1章から3章まで一気に読みました。

今回の記事は、その勉強会で話した内容を僕なりに解釈してまとめてみようと思います。あくまで僕なりの解釈ですので、正確さは多少損なうかもしれません。そこはごめんなさい。

Digital Habitats; Stewarding Technology for Communities
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著者のウェンガーといえば、「実践共同体」という話が有名ですね。以前、メールマガジンでその内容を執筆しましたので、よろしければご覧ください。

「5分でわかる学習理論講座」第4回:学びあいを行う集団〜「実践共同体」
http://www.beatiii.jp/beating/015.html

今回のDigital Habitatsは、「共同体」だけではなく、それに「テクノロジー」がどう関係するのかについて言及した本です。Habitatsという言葉は、「生息地」などと訳されるかと思います。「デジタル空間」というと、ちょっと的確でないかんじがしますが、要するにそういうことについて書いた内容です。「コミュニティのためにテクノロジーをいかにうまく使うか」ということがテーマであるといえます。

一章と二章の内容は、実践共同体などの概念をおさらいしたり、テクノロジーの歴史を振り返るかたちとなります。この本の根幹となるアイデアがでてくるのが三章です。

ここで出てくる重要な概念は「Technology Stewardship」という言葉なんですね。stewardというと、「スチュワーデス」という言葉がまず思い浮かびますよね。勉強会でも、的確な訳が難しいということだったのですが、「羊飼い」的なニュアンスもあるようです。

この「Technology Stewardship」とは、要するにコミュニティとテクノロジーの関係をどう考えるかという考え方といってもよいのかなと思います。

いままでは、コミュニティとテクノロジーというと、明確に「テクノロジー担当の人」がいて、その人は主にバックアップとメンテナンスをしておければよかったかもしれません。しかし、ウェンガーがいう、「Technology Stewardship」という考え方はそれと異なります。

あえてヒトコトでいってしまえば、「テクノロジーだけ」に詳しいのではなく、「テクノロジーとその所属しているコミュニティのどちらについても」詳しく、時にはリーダーシップ的な役割を担いながら、テクノロジーを使ってその場の学習に貢献する場作りをしていく人・考え方のことを指すといってもいいかもしれません。それがある意味「羊飼い」的なイメージなのかもしれません。要するに、場の中にいながら、導いていくかんじでしょうか。

「テクノロジーを使って導入すりゃ終わり」っていうわけではなく、ある意味、そのコミュニティに関わりながら、場をデザインすることまでも含んでいるという印象を受けました。

この考え方はなかなか面白いですよね。僕の感覚としては「これはいままで聞いたことのなかった発想だ!!」というかんじではなく、「そういうことの大切さをうまく、概念として切り出したな!」というかんじです。ウェンガーという人は、そういう能力にたけているのかもしれません。

「テクノロジーとコミュニティの相互作用」を通して、学びが深まるということは、おそらく、いまもネット上で自然発生的に起こっていると思います。また、意図的にうまいデザインをして、その場を作っている人もいるでしょう。そういうことをウェンガーはちゃんと切り出して、名付けたということが、ひとつ面白いのかなと個人的に思いました。(あくまで個人的な感想ですが)

また来月に、4・5・6章を読みます。この議論がどうつながっていくのか楽しみです。

個人的に、いま行っている勉強会は参加メンバーが多様なので、いろいろな角度から議論が盛り上がって面白いです。また、三宅なほみ先生の何気ないコメントが、すごくつきささって面白いということが多々あります。

また報告できればと思います。今回はそんなかんじです。

ウェンガーといえば、この本が日本語で読めますね。以前、書評も書きました。

書評:コミュニティ・オブ・プラクティス

https://www.tate-lab.net/mt/2008/12/post-10.html

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)
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5 今こそ学ぶべきところは多い
4 実践コミュニティのデザインと発達
4 知識ってマネージメント可能なんですね
4 自由なコミュニティーを用いたナレッジマネジメントの影響力
4 ダイナミックな知識をいかにマネジメントするか?