本書は「デザイン思考」について、著者の佐宗さんの体験(イリノイ工科大学デザイン学科)をもとに、実践的かつ「ビジネスにどのような意義があるか」の視点から書かれたものです。
客観的に「デザイン思考」を説明するだけではなく、佐宗さんのビジネスパーソンとしての個人的なストーリーと共にデザイン思考が語られているので、読者の方も「情報を得る」というだけではなく、共感しながら読むことができるのではないかと思います。
単なる「説明」ではなく、感情移入しながら読めるこの本自体がまさに「デザイン思考的」につくられた本だと感じました。
具体的でわかりやすく、地に足がついたかたちで書かれているので、デザイン思考の発想を身近に感じることができると思います。
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私個人が読んでいて感じたのは、デザイン思考のエッセンスは、大学教育におけるPBL(Project Based Learning)をつくる上でも非常に参考になるとあらためて思った点です。
私は立教大学経営学部で産学連携型のPBL授業をデザインして今年が2年目ですが、学生のプラン作りを支援する上で、いくつか改良の余地があると感じています。その部分を埋めるためのヒントが本書にはありました。
具体的なキーワードは「プロトタイピング」と「現場感のあるデータを得る」という点なのかなと。私なりに簡単な言葉で言うと「手足を動かす」ということになるかと思います。
PBLをやっていると、どうしても「プランのためのプラン」になりがちな側面があるのですが、そのあたりの部分を埋めるためのヒントがあったように思います。
「デザイン思考」と言われると、ちょっと自分とは遠いかなと思う人もいるかもしれません。
しかし、本書は具体的かつ、ストーリー的(ある種の一人称的)にデザイン思考が語られているので、自分にも近いものとして読むことができると思います。「デザイン思考」ってなんとなく気になっていたけどという人にとっては、入門書としておすすめです。
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ちなみに、個人的な話になりますが、私は著者の佐宗さんとは知り合いで、大学院生の頃に色々お世話になりました。新製品に関するアイデア出しのワークショップに参加させていただくなど、印象的な思い出がいくつもあります。一貫した関心をもとに、このようなかたちで書籍をまとめていることをみて、個人的にもよいがんばろう!と思えた一冊でした。
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