大学生研究フォーラム2017に参加してきました。10年続いたこのイベントも今年が最後。今年は全体を通して「これまでの10年、これからの10年」を意識したつくりとなっていました。
■午前中は溝上慎一先生のご講演
午前中はこの会の企画・運営の中心であった溝上慎一先生から10年間の振り返りに関するご講演がありました。話を聞いていて感じたのは、フォーラムの10年間は溝上先生の研究の歴史でもあるということです。
非常にざっくりではありますが、こんな変遷があるのかなと感じました。
・大学生について論じた「大学生論」(「若者論」ではなく)からのはじまり
・大学生について理解するために実施した1000人以上のインタビュー
・大学生のキャリア意識と成長の関係についての探究
・大学生の学びに方に関する研究
・高校、企業との接続で成長を捉える視点
私はフォーラムはたしか2回目から(1回目もでていたかな・・・)すべて参加しています。また、溝上先生の著書・論文については2009年に当時の院生仲間とともに手分けをしてほぼ全部を読むということをやりました。なので、これらのお話はとても懐かしかったですし、結果的に自分の研究生活を振り返ることになりました。
私もこの10年間でフォーラムについては、
・大学院生として「研究対象として」大学教育をみていた時代(完全なる参加者として)
・大学院生として「溝上先生との共同研究として」間接的にフォーラムにかかわっていた時代
・大学に就職して「大学教育の実践者の視点を持ちつつ」、研究として実践者としてかかわっていた時代
というふうにかかわり方がどんどんと変遷していきました。どの立場としてもこのフォーラムがあることの意義は大きかったと思います。
■午後の最初は分科会
午後は分科会で3つにわかれました。私は1の「企業との連携」に参加しました。
【1】「企業との連携」
ファシリテーター:山辺 恵理子(都留文科大学・講師)
登壇者:松高 政(京都産業大学・准教授)
岩佐 峰之(京都市立西京高校・教頭)
会場:国際交流ホールⅠ・Ⅱ【2】「学びとキャリアの連携」
ファシリテーター:山田 剛史(京都大学・准教授)
登壇者:石山 恒貴(法政大学大学院・教授)
今村 久美(認定NPO法人カタリバ・代表理事)
会場:百周年記念ホール【3】「地域との連携」
ファシリテーター:田口 真奈(京都大学・准教授)
登壇者:片峰 茂(長崎大学・学長)
中村 怜詞(島根県立隠岐島前高校・教諭)
会場:国際交流ホールⅢ
松高先生のプレゼンテーションは、京都産業大学のインターンシップなど企業との連携にかかわる実践のお話でした。立教大学経営学部でやっている実践とも内容が近いため、とても参考になりました。
・連携する企業にとってのメリットは何か?
・インターンシップとはそもそもなに達成するために実施するのか?
などを検討することの重要性をあらためて理解できました。
岩佐先生のプレゼンテーションは、京都市立西京高校の実践についてでした。はじめてお話伺ったのですが、岩佐先生のパワーのあるお話ぶりに引きつけられつつ、内容もとても充実したものでした。
高校生のこの言葉が実践についてうまく表現しているなと思います。
めっちゃがんばる
めっちゃしんどい
めっちゃ楽しい
「一生懸命がんばって、それは時に大変だけど、一生懸命にやっているからこそ楽しいのだ」という教育環境は自分自身もつくれるのが一番だなと思います。私は立教大学経営学部のBLP(Business Leadership Program)の授業をつくっていますが、そういう場になればということを思いました。
■午後のラストはパネルディスカッション
最後はパネルディスカッションでした。
パネルディスカッション
司会:溝上 慎一(京都大学・教授)
パネリスト:中原 淳(東京大学・准教授)
松下 佳代(京都大学・教授)
児美川 孝一郎(法政大学・教授)
まず松下先生から「資質・能力」という視点から10年をまとめるプレゼンテーションが行われました。次に児美川先生から「キャリア教育の10年」についてのプレゼンテーションが行われました。最後に中原先生から「企業・世の中の変化の10年」についてのプレゼンテーションが行われました。
各先生方15分という短い時間ではあるものの、これまでの10年間の歴史がぎゅっとつまったプレゼンテーションでした。「これからの10年」については、今後の未来というのもありますが、各先生が今後どういうことを研究されるかというお話でもあったかと思います。
■全体を終えて
ということでざっくり全体を振り返りました。フォーラムは朝から晩までぎゅっとプログラムが詰まっているので、参加者として参加していただけではありますが、かなりパワーを使ったというかんじがしました。
今回のフォーラムは、この会で新たらしい視点や知識を得るというよりも、講演を聴きながらどこか頭の片隅に「自分のかかわりについてぼーっと振り返り」をしつつ、「これから自分はなにをやろうかなー」というかんじがありました。
自分もあまり意識していたわけではなかったのですが、気づけばフォーラムについては2010年からずっとブログを書いていたこともあり、自分にとってはなんとなくここをベンチマークとして、自分の研究・実践を考える節目としても使っていたのかなと思います。
このイベントの価値というのは、講演の内容もさることながら、ここに集まる人たちとのつながりという点も大きいです。今年もたくさんの方と出会い、新しい出会いもありました。「ここにいけば、だれかと会える」という安心感も、このイベントが持っていた価値なのかなと思いました。
イベントは10年という節目をもとに終わりますが、これからの10年という意味では、自分も研究者として、実践者としてどのようにやっていこうかということを考えます。いますぐに「これ」というものがあるわけではありませんが、確実にいえることは自分たちの世代が中心になるくらいがんばることがまずポイントになるんだろうと思います。いま30代の研究者たちが、次の新しい流れをつくれるようがんばっていきたいと感じました。
■これまでのフォーラムの記事
2010年からフォーラムについては記事を書いていたのでそのリンクをまとめておきます。
大学生研究フォーラム2010
大学生研究フォーラム2011
大学生研究フォーラム2012
大学生研究フォーラム2013
大学生研究フォーラム2014
大学生研究フォーラム2015
大学生研究フォーラム2016(午前中)
大学生研究フォーラム2016(午後)
■今回フォーラムででてきた書籍の一部を紹介しておきます
当日も紹介されていた調査結果をまとめた書籍です。
こちらはさきほどの書籍ではできなかった「縦断調査」をしてその結果をまとめ、ワークショップ案も提案した書籍です。